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​不燃物

2017年  制作

カラーコピー紙。ボルト。

全1編

 

我々は あらゆる不燃物の中から たった一つの種を拾うだろう

我々は そのたった一つの種を上着のポケットに入れ 大切に持ち帰る技術を持っているだろう

我々は 豊かなハンカチーフの上で緑の芽を摘むことを 許されてきただろう

我々は ガラスを割ることを許されても プラスチックを割ることは不可能とされていただろう

我々は 創造し解体してきたのか 解体し創造してきたのか 道を誤ってきただろう

我々は目覚め 我々は立ち上がり 我々は首を伸ばし 我々は空の上から 我々は伸び上がって 我々は笑うだろう

我々という芽を摘んで 我々という花を開き 我々という不燃物を燃やし続けるだろう

我々という国家のために

NEW MODEL

2017年  制作

​コピー紙。ハトメ。ボルト。

全2編(長編詩) (以下、冒頭部分)

 

無分別な夢の凝縮 凍らせて 瓶の中に入れ 静かに振る

良心とか真心とか純真とか 肥大とか無敵とか無遠慮とか 真四角とか水面下とか広大とか

鳴り響く 山の合間に立つように

老齢な足が 弱りきった小鳥のそばを ゆっくりと通り過ぎるように

古びた館があった

草に覆われ 名も知れぬ花々が散りばめられ 得体の知れぬ実が夥しく散乱し

不思議な鳴き声を放つ獣も どれだけいるのか分からない

既に捨てられた館だったが 誰もが関心がなかったわけではない

昔 王が住んでいたとか 昔 神が宿っていたとか 昔 妖精が戯れていたとか 昔 精霊が潜んでいたとか

2017年   制作

黄と水色の紙。ボルト。

全1編(長編詩) (以下、冒頭部分)

 

近隣の砦に陽が射して 萌芽した生物界

辞書や事典に認められないものたちほど 成長著しく

石や岩や金属などで 構成された砦に 風の隙間が通過する

だが砦は砦 確固たる意志を持ち 存在し続けた

百十年経つ

この砦を作った者は この世に息はなく この砦を作ることを命令した者も もはやいない

たった百十年で この砦の意味を知る者はいなくなった

​夢の凝縮

​百十年の砦

邪よ 聖よ 金の滑車を回せ

2016年  制作

 

グレーの紙。クラフト紙。ホッチキス針。ボルト。

全9編 (両A面2編と7編。合計9編)

邪よ こうべを垂れ かしずく我が身に情をかけ 愚問を投げかけ 自賛を説く

矢は放たれたか 折れた弓が散らばり 後悔という念だけが 水溜まりに映る

多くが望むなら それも また 理解し難い正義がまかり通り

誰もがそれとは分かりながら 服従していく 祈りとか守りとか

もしも 真っ直ぐな線が引けぬなら 曲がっても続け とにかく続け 続く線を引っ張っていけ

多くの言葉を失っても 合図なら分かりそうなものだ

きらめきだけが頼りの この船に 案内はなくとも 方向だけは照らしてほしい

我が道は水 光の溶けた気温の中で 泳ぐことも歩くことも走ることも飛ぶことも 諦めるのなら 

平伏し ほふくすればいい

手の平の上に豊穣はなくとも 目の見える内に全てが明るみにならずとも 仰ぎ見る自由はあるだろう

浴びる幸福もあるだろう 正しい位置に影と陰が設置された時 反対側を見る

世界の方向と反対側を 未来の行く末と逆方向を ただ見る 何が見えるか

FLOW FLOWER 永遠の流れ 一瞬の花

2016年  制作

ピンク、黄などの色紙。ボルト。

全8編 2003年制作の詩を新たに詩集にした。

flow flower

流れても 流れても 流れついても 満たされない 満たすことのない 川の流れ

海のように広く 湖のように澄み 池のように小さく 沼のように濁り 泉のようにこんこんと湧き出でる

秘密の魔法を 持っている

流れても 流れても 流れついても 満たされないよう 満たすことのないよう

川の流れに身を投じ 花のように流れてごらん

それが秘密 それが永遠 それが創造 それが不滅

POEMSTER 一つの星が目の前に現れる時

2016年  制作

赤、青、灰などの色紙。ボルト。

全6編  2005年制作の詩を新たに詩集にした。

 

COAL TAR

花びらを一枚 引き抜く その感触を覚え

この指は 次に 何を

2016年   制作

 

半紙。セロファン。ボルト。

​短編詩10編と長編詩1編の合計10編。

 

野生巡礼精霊回帰

君臨する王者のために 鳥が鳴き 花が咲き 木々が風を呼び 太陽が微笑み 月が瞬きし 星々が流れ

虹がいくつもの輪を描き 獣が吠え 野生が立ち上がる

王者は 手を差し伸べ 全ての灰になる 

無数に散り ばら撒かれている地面に 露のように消え 霧のように溶けていく

ひとつの100年 また100年 また100年 繰り返されても100年程度の歴史

小刻みに更新されても 継続するのは 空 海 大地

宇宙は 襞のひとひらを熟す

野生巡礼精霊回帰

POEMSTER 一つの星が目の前に現れる時

​記憶は消失し 記録は保存され

2015年  制作

 

​コピー紙。ボルト。

全6編 アンソロジー 1999年〜2004年制作の詩を新たに詩集にした。(以下、冒頭部分)

 

赤の絵に青の情景

空港 降り立つ感覚を青で表現 何年振りかの土地への帰還 男の目 冷ややかで 奥に光 

薄い唇 薄い微笑 皮肉な 歩く足 街 雨 風 ガラスドア 手を掛ける 呼び止められる 振り返る

待っていたかのように招き入れる ガラスの入り口 黒いソファー テーブルに3号の絵

炎の絵 女の絵 赤いドレスの絵 燃えているかのように 一枚の絵に全てが叩き込まれている

絶筆 初めて見るものが懐かしいようなものに思える 未完 これ以上手を加える必要があるのか

​次世界渡航

2015年   制作

 

蛍光カラーペーパー。銀、灰色の紙。ボルト。

​全6編

 

溶接された未来の中で 埋もれた期待を提示せよ

立体化された意味を超えた時間を見せ 無秩序に散らばっていく思惑をあらわにせよ

物体には意思がある 形になれば思考を持つ 望みを持たせれば実現への道を探る

圧力を試す 急ぐ判断 遮断機が降りてくる 通り過ぎるのは 是か非か

切断する意志が動く 

選択権は 窓から手を振る者にあり

2015年  制作

トレーシングペーパー。青、灰の色紙。ボルト。

全5編 (それぞれの詩のタイトルが一行詩となっている作品)

 

滑り落ちる領土を胸に視線はひたりと意識を据えて

視線と領土を巡り 行き着くこと

儚さが永遠だと 記述する訓練を受け 実行する

乾いた砂の上を歩き 濡れた土の上を走り 眩しい光を受けて 影の向かう方へ探しに行く

境界線で 旗を振る者が振り返り 何か言いたげに 指を差す

その方向は 雲に隠れて見えず 立ち往生している間に 偶然という虚構が滑っていく

果たして今 落ちたものはどこへ

​越境滑走路

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